「あたい、ついに引っ越せるかも——」。SNSで見つけた「誰でも簡単に資産2倍」という広告をきっかけに、チルノの投資アプリの残高はみるみる300万円まで膨らんだ。でも、実際に引き出せたのは、たった2万円だけだった。
これは、海外の暗号資産取引所を装った投資詐欺の相談事例をもとに再構成した、架空の防犯ストーリーです。チルノ・霊夢・魔理沙は物語上の役を演じています。「魔理沙コイン」や作中の取引所名はすべて架空のもので、特定の人物・事業者を描いたものではなく、暗号資産や海外の取引所そのものを詐欺と決めつける内容でもありません。画面に表示された残高と、実際に投資した金額・受け取れた金額は、物語の中でもはっきり区別しています。
入金する前に立ち止まって確認したいポイントを、物語を通して紹介します。
チルノと霊夢、節約の日々
チルノは駅前のスーパーで働く。日当たりのいい部屋に引っ越したくて、何年も節約を続けて100万円を貯めた。同じ店で働く同期の霊夢は、そんなチルノの節約ぶりをずっと見てきた。
ある日、チルノは気に入っている部屋の写真をまた眺めていた。

また部屋の写真を見てるの?

うん。ここの窓、見てよ。朝、ちゃんと日が入るんだって

今の部屋、暗いって言ってたものね

洗濯物が、なかなか乾かないんだ。休みの朝くらい、窓辺でご飯を食べたい

チルノらしい夢ね
その夜、チルノは自分の部屋で貯金メモと引っ越し先の部屋の写真を見比べていた。

100万円貯まったけど……引っ越した後も考えると、もう少し余裕がほしいな
引っ越し代や新しい家具を差し引くと、貯金はほとんど残らない。そんなとき、チルノはSNSで一つの広告を目にする。「海外の暗号資産取引所」を装った、物語内の架空の広告だ。
「誰でも簡単に、1か月で資産2倍!」「新登場の『魔理沙コイン』」「できたばかりの今がチャンス!」「スマホひとつで、節約生活から卒業」
この文言に心を動かされたチルノは、会社の登録を調べないまま問い合わせを送る。対応したのは「魔理沙」と名乗る日本語サポート担当だった。

お問い合わせありがとうございます。取引所の日本語サポート、魔理沙です

少ない額でも、使えるの?

1万円から始められます。おすすめは『魔理沙コイン』です
チルノは貯金から1万円を投資した。
1か月後、画面の表示額は2万円になっていた。

えっ、1万円が2万円に!霊夢にも見せよう!

本当だ。よかったわね、チルノ。ずっと節約してたものね

うん。この調子なら引っ越せそう!
チルノは増えた2万円を全額出金した。数日後、口座にはそのまま2万円が振り込まれ、引っ越し用の小物や日用品の買い物に使った。「ちゃんと出金できた」という体験が、この後の判断に大きく影響する。
翌日の休憩室。

今日も半額シール待ち?

今日は定価のプリンを買う!

大きく出たわね
チルノは「魔理沙コインが順調だった」と、改めて貯金から10万円を投資した。最初の1万円と合わせて、累計投資額は11万円になった。
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画面の残高は、どんどん膨らんでいく
二週間後、画面の表示額は40万円になっていた。

霊夢!今度は40万円になってる!

この前より、ずいぶん増えたのね

あたいもびっくり。節約しても、なかなか貯まらなかったのに
チルノは朝起きたときも、休憩時間にも画面を開くようになった。順調に増える画面を見て、引っ越しを思い描いた。

今度は25万円、追加投資してみようかな。あの部屋、誰かに先を越されたらいやだな
部屋を逃したくない気持ちから、チルノはさらに25万円を投資した。累計投資額は11万円から36万円へ。
さらに一か月後、画面の表示額は120万円になっていた。チルノが狙っていた部屋はまだ空いている。

36万円投資して、今は120万円!あの部屋、まだ空いてる!
チルノは部屋の写真を見ながら、窓辺で朝ご飯を食べる自分を思い描いた。そして、引っ越し用に残していた49万円も投資に回す。累計投資額は36万円から85万円になった。
さらに数週間後、画面の表示額は300万円に達していた。

霊夢、見て!投資したお金は累計85万円。残高が300万円になってる!

300万円?ずいぶん増えたわね

あたいも信じられないよ。あの部屋、内見を予約したんだ!
ここまでの投資額と画面上の残高を比べると、その差はこうなる。

投資額が85万円に増える間、画面上の表示残高は300万円まで膨らんだ。でもこの時点で実際に手元に届いたのは、最初の出金で得た2万円だけだった。残りはすべて「画面上の数字」にすぎなかった。
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100万円を引き出そうとした日
内見の費用に充てたいと、チルノは100万円の出金を申し込んだ。

引っ越しに使いたいんだ。100万円を引き出したいんだけど

今回の出金には追加認証が必要です。認証金として、別に5万円お支払いください
これまでの出金は普通にできていたのに、今回は認証金を求められた。チルノは不審に思いながらも、内見まで残り三日という焦りが勝ち、認証金を5万円支払った。累計の支払額は85万円+5万円=90万円になった。

認証金を払ったよ。100万円はいつ出せるの?

認証金は確認できました。ただ、出金には税金としてさらに10万円が必要です

また先払い?そんなの、最初に聞いてないよ!

お支払いが確認できるまで、出金は保留となります
ここでやめたら、払った90万円も戻らないのでは——。そう考えたチルノは、残った貯金からさらに10万円を支払った。支払総額は90万円から100万円へ。

税金も払ったよ

出金手続きの保証金として、さらに20万円が必要です

また お金が必要なの……?貯金はもう全部払ったよ。あたい、これ以上お金がない
チルノは20万円を支払えず、この追加請求は未払いのまま残った。その後、魔理沙からの返信は止まった。
数日後の休憩時間。

そういえば、あの魔理沙コイン。あの300万円、もう引き出せたの?

……うん、最初の2万円しか引き出せなかった。100万円を出そうとして、認証金も税金も払ったのに……

そんな……私もあの数字を見て、一緒に喜んでたのに

あたい、1万円から始めて、全部で100万円も払ったんだ。受け取れたのは、最初の2万円だけ……
支払総額100万円、受取額2万円。差引98万円が、戻ってこなかった。何年も節約して貯めたお金だった。

内見、断ったんだ。部屋の写真も、もう見られない

……チルノ
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入金前に確認したい4つのポイント
チルノが立ち止まれたはずのタイミングは、最初の1万円を投資する前だった。SNS経由の投資誘誘に出会ったとき、次の4点を確認したい。
- 「誰でも簡単に」「1か月で2倍」では始めない —— こうした誘い文句で始めないことが第一。「あなただけ特別」「今がチャンス」といった語句は、冷静な判断を鈍らせるための定番文句でもある。
- 運営会社の登録を確認する —— 日本居住者向けに暗号資産交換業を営むには、海外の業者であっても日本の法令に基づく登録が必要。金融庁は「日本の居住者を相手に暗号資産交換業を行う者は、日本の法令に基づき登録を受ける必要があり、これは海外所在の業者でも適用される」としており、無登録業者は「出金の拒否や法外な出金手数料を請求される」トラブルが多く報告されている。広告を離れて、金融庁の登録一覧で会社名と登録番号を照合する。ただし登録は利益の保証ではない。
- 本物のサイトかを確認する —— 登録された会社を装う偽サイトも存在する。日本暗号資産等取引業協会(JVCEA)の会員紹介など、業界団体の公式リンクからサイトを開き、広告のURLと照合する。不明な点は広告上の連絡先ではなく、公式の連絡先へ確認する。
- 利用するなら、金融庁に登録された国内の交換業者を —— 公式サイトから利用する。登録は安全を保証するものではないが、無登録業者よりは投資家保護の態勢が整っている。
もう一つ、国民生活センターに寄せられた相談事例では、暗号資産で約1,000万円の残高に対して「税金等で500万円の入金が必要」と指示されたという別の事例も報告されている。「少額は出金できたが、大額の出金時に名目を変えて追加請求される」という流れは、一人の特殊なケースではなく、繰り返し報告されているパターンだ。
守りたかったのは、引っ越しのためのお金だった。確認できなければ、1万円でも入金しない。
出典・参考資料
本記事は次の公的機関の情報を参考に作成した、架空の再構成です(確認日2026年10月6日)。
- 金融庁:無登録業者との取引は要注意
- 金融庁:暗号資産の利用者のみなさまへ(登録一覧の案内)
- 金融庁:SNS等の投資詐欺と、登録業者のなりすまし
- 金融庁:投資詐欺等の相談事例(少額出金・追加請求)
- 国民生活センター:海外の取引所で出金時に認証金を求められた相談事例
- 国民生活センター:海外の暗号資産取引サイトに誘導された相談事例
- 警察庁:SNS型投資詐欺の実例と対策
- 日本暗号資産等取引業協会(JVCEA):暗号資産を使った詐欺について
- 日本暗号資産等取引業協会(JVCEA):会員紹介
※登場人物・会社名・通貨名はすべて架空です。暗号資産や海外取引所そのものを詐欺と決めつける趣旨ではありません。



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