「チルノは、帰っていいよ」「あんたはどうするの?」「……あたしは行く」。駅前で交わされた短いやり取りが、この物語のすべてを物語っている。一人では行かせられない。でも、その先にあったのは、助けることとはまったく違う結末だった。
これは、警察庁の事例を参考にした架空の物語です。元の事例は、友人に誘われた特殊詐欺です。大学生・宝石店・当日の逮捕という設定は創作で、人物・暮らし・会話も創作です。闇バイトやSNSでの勧誘を美化する意図はありません。
脅されたとき、犯罪だと知ったときに取れる別の選択を、物語を通して紹介します。
怪しい求人は、二人で見極めていた
チルノは大学生。初めてのバイトを探していた。同じ大学の友人、霊夢とは面接の練習に付き合ったり、求人を一緒に見たりする仲だ。

こっちは、一日で五万円? 何をする仕事?

詳しくは連絡して、だって。これ、怪しくない?

……うん。やめとこ
その場では、二人とも怪しい求人を見分けられていた。だが数週間後、家賃の支払いに迫られていた霊夢は、一人で別の募集に応募する。「商品の仕分け」という、ごく普通の説明だった。

友達の告白と、本当の依頼
その後、霊夢は授業に来なくなり、連絡も途絶えた。夜になってようやく返事が来る。

仕分けのバイト、辞めたいの。今日、担当の人と会うの。チルノが隣にいてくれたら、ちゃんと言える気がする

付き添ってほしいってこと? 分かった。一緒に言おう
チルノは、普通のバイトを辞める相談だと信じて、相手や場所を自分では確かめずに霊夢についていった。駅前で、霊夢は電話をかけ、スピーカーにする。
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着きました。友達も、一緒です

宝石店の件、二人でやってもらう。店を襲う仕事だ

それ、強盗じゃないですか。あたい、帰ります

お前の家の住所、送っただろ。断るなら、家に行く
通話が切れた。霊夢は、応募の際に身分証を提出し、家族のことまで聞かれていた。「仲間を連れてこい」と脅され、退職の付き添いという嘘でチルノを呼んだのだと打ち明ける。

一緒に帰れるって、信じたのに

……ごめん

一人にできなかった、その先
通話が切れたあと、チルノは警察に相談しようとスマホを取り出す。

お願い、今は電話しないで。その間に、家に行かれたら……

チルノは、帰っていいよ

あんたはどうするの?

……あたしは行く

一人で? 大丈夫な顔じゃないよ
霊夢に助けられてきた日々を思い出し、今度は自分が支えなければと、チルノの判断は揺らいだ。二人なら何とかなるかもしれない。その根拠のない期待にすがり、電話をかけようとした指が止まる。

……あたいも、行く
チルノは、犯罪だと知っていながら、警察に電話をかけずに加わった。友達を見捨てないことと、犯罪を手伝うことを、混同してしまった。
その日、営業中の宝石店が襲われた。店員は脅され、商品が奪われた。店員には、二人の事情は関係なかった。事件当日、二人は逮捕された。いつもなら家へ帰る時刻、チルノは帰れなかった。

一緒に行けば、助けられると思ってた。一緒に行く場所を、間違えたんだ……
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脅されたときに取れる、別の選択
脅され、仲間を連れてこいと言われても、友達を誘い出さないでほしい。犯罪や脅しを知った時点でも、相手の指示には従わず、安全な場所から警察へ相談してほしい。友達がすでに個人情報を送っていても、相手の指示に従うしかない、ということではない。
- 「仲間を連れてこい」「家族に危害を加える」と脅されても、応じずに最寄りの警察署や警察相談専用電話(#9110)、110番へ相談する。
- 友達から急な呼び出しを受けても、相手や場所を自分で確かめないまま、知らない相手との約束についていかない。
- 自分や家族への危害を告げられたら、その場にとどまらず相手から離れ、110番する。
- 友達を一人にしないことと、一緒に犯罪をすることは別物だと考える。付き添うなら、助けを求める場所へ。

一人だと、話せない

一人にしないよ。一緒に、相談に行こう
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出典・参考資料
この物語は、警察庁の事例を参考に再構成した架空のエピソードです。登場する人物・大学・店舗・経過はすべて創作であり、実在の個人・団体とは関係ありません。闇バイトやSNSでの勧誘を美化する意図はありません。



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